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DIYで日本の住まいはどう変わる?R不動産 林氏×toolbox荒川氏×リライフプラス君島氏 座談会 前編

DIYで日本の住まいはどう変わる?R不動産 林氏×toolbox荒川氏×リライフプラス君島氏 座談会 前編

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DIYで日本の住まいはどう変わる?

アメリカ西海岸 ポートランドのカルチャーが注目されるようになって久しいですが、大量生産・大量消費を求めることなく、自分たちの手で生活の質を追求しようとするそのライフスタイルに影響されてか、日本でもここ最近「DIY」という言葉を目にする機会が増えたように思います。特に「住まいのDIY」です。

ここで言うDIY(Do It Yourself)とは、既成品やプロの手に頼るのではなく、欲しいものを自分たちの手で作ってしまおうというクリエイティブなスタイルのこと。先に述べたポートランドでは、自分たちの住まいをDIYでカスタマイズしたり、リノベーションするケースも少なくないと言います。そんな住まいのDIYは、ここ日本にも文化として根づいていくのでしょうか?そしてそれにより、日本の住宅事情はどのように変わっていくのでしょうか?

そのヒントを探るべく、日本の住宅業界のイノベーターである東京R不動産 林厚見さんとtoolbox 荒川公良さん、さらにリノベーション専門誌リライフプラス編集者の君島喜美子さんをお迎えし、住まいのDIYについて座談会を開催しました。

■プロフィール

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写真左:林厚見 氏 (Atsumi Hayashi)
株式会社スピーク共同代表。不動産セレクトショップサイト「東京R不動産」ディレクター。「R不動産toolbox」のマネジメントの他、カフェ・宿の経営なども行なっている。

▼東京R不動産(http://www.realtokyoestate.co.jp/

写真中:君島喜美子 氏 (Kimiko Kimijima)
編集者。株式会社扶桑社 住まいの設計編集部にて、リノベーション専門誌「リライフプラス」の編集を担当。リノベーション・DIYされた住宅の取材を数多く行なっている。
▼公式WEBサイト「リノベりす」(http://renoverisu.jp/

写真右:荒川公良 氏 (Kimiyoshi Arakawa)
株式会社TOOLBOX執行役員。「自分の空間を編集していくための”道具箱”」をコンセプトとしたWEBサイト「R不動産toolbox」の運営責任者として、サービスの企画・開発を行なっている。
▼R不動産toolbox(http://www.r-toolbox.jp/

なぜ、いまDIYなのか?

― まず初めに、なぜ今“住まいのDIY”が注目されているのでしょうか?

林:
モノも情報も溢れるように与えられる世の中にあって、“買う”という行為だけではあまりわくわくしなくなってしまい、それよりも「つくる」という体験や自己表現の方が楽しくなってきたんだと思います。必要なものを自分で考えて作るほうが気持ちが良いんだということを、一部の人たちが言い始めたら、そのメッセージが急速に多くの人に支持されつつあるというのが今の状況かなと。

荒川:
「技術」と「情報」が充実してきているのも大きいですよね。コンパクトな電動工具もどんどん出てきているし、『BLACK+DECKER』のものなんか本当に使いやすいですよ。昔の日曜大工というとノコギリ・カナヅチのイメージでしたけど、道具の進化によってかなりハードルは下がっていると思います。

あと「情報」という側面でいうと、雑誌で頻繁に“リノベーション”が取り上げられるようになっているのもきっかけになっていると思う。単純に憧れを喚起しているというだけでなく、そこに住む人の顔が見えてくるような、既成品にはないハンドメイドで仕上げた感じがウケている気がします。「これなら自分にもできるかも」「やってみたい」という気にさせるというか。

IT企業の経営者が、保養所をDIYで別荘に。

君島:
単純に、以前と比べて各家庭の世帯年収が下がっているということもあるのかもしれませんね。コストを下げるために、必然としてDIYに行き着いている、というか。

林:
どうなんでしょうね。実は僕、1~2年前に、時代の変化を感じたきっかけがありました。大手IT企業のある経営者に、海のそばに別荘が欲しいので物件を探して欲しいと言われました。ちょっと前であれば、お金持ちの別荘であれば建築家がデザインして真っ白な豪邸かなと思ったりするわけですよね。しばらくしたら「企業の古い保養所を買い取ったので、これからリノベします!」と。実際その人がヘルメットかぶって、(壁を)ドドドってやってる写真をFacebookにアップしているわけです。

君島:
それは面白いですね!

林:
収入が減っていく不安から、本能的に「自分の手でつくるほうがいいよね」って感じ始めるのもあるかもしれないけど、その別荘の例なんかを見ていると一概にそうは言えないですよね。もはや目的は節約じゃない。楽しいから、カッコいいから、やりたいから、やると。

人の感覚は今も少しずつ確実に変わっていて、僕たちのやっている東京R不動産というWEBサイトでいうと、古くて味わいがある物件なんかを喜んで見に来てくれたのは、10年前はアーティストばかりでした。そこから商業クリエイター、徐々にメディア系の人たちなんかが増えて、という具合にだんだん一般層に広がってきたんですよね。今はITベンチャーやっている若い人たちなんかは、以前ならマニアックだった僕らの感覚と全然変わらないです。

君島:
分かります。リライフプラスで取材させていただくお家をみていても、創刊当時はデザイナーやクリエイターのお宅が多かったんですけど、いま本当に裾野が広がってきている感じ。家中を真っ青に塗装しちゃったご夫婦が、2人とも「普通に会社員です」みたいな事例も出てきていますね。

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従来型のDIYが広がるというより、DIYの楽しみ方の“幅”が広がる。

― DIY的な価値観が徐々に広がりつつあるということですが、例えばアメリカやヨーロッパのようにごくごく一般の方々も「自宅をDIYするのが当たり前」というところまで浸透していくと思いますか?

荒川:
僕は浸透していくと思いますね。時間はかかると思いますけど。先日ちょうどイギリス人と話したんですが、DIYってお父さんから習うらしいんです。で、生まれたときから家には物置小屋があって、工具がドカッと入っていて。女の子は料理、男の子は日曜大工というのが当たり前だったと。マスに広がっていくというのはまさにこういうことだと思うので、ブームのような形で一気に広がるというものではないとは思います。

林:
DIYが当たり前という状況になるかと言われると難しいけど、今より浸透することは間違いないですし、僕は「ここまでがDIYで、ここからはDIYじゃない」というような境界がシームレスになっていくと思う。裏にシールがついているプリント壁紙を貼るだけとか、プロの職人さんがヘルプで来てくれるとか、そもそも誰でも簡単に解体できる作りになってますとか。コアな人からすると「それはDIYとは言えない」というようなことも、DIYの一つに数えられるようになっていくでしょう。

例えば自転車も、こだわる人はお金をかけてとことんこだわるじゃないですか。僕も乗ってるんですが、フルオーダーは面倒くさいので、カスタムオーダーでライトに楽しんでいます。それと同じように、単純に従来型のDIYが広まるというのではなく、DIYの“楽しみ方の幅”が広がっていくということなんだと思います。

荒川:
個人的にもDIYを広めたいし、広まってほしいという願望もあります。よく住宅サービスはクレーム産業だと言われますよね。でもDIYが広まって自分で壁を塗るくらいみんなできるようになったとしたら、みんなが適切な基準でプロの職人の仕事を評価できるようになる。もちろん厳しく評価されることもあると思いますが、一方で職人の仕事に対する敬意も生まれてくると思うんです。そうすると、家という空間を作っていくときの施主と設計・施工業者との会話が、全く違ってくるんじゃないかと思います。

 

(次回に続く)

▼後編はこちら
http://eamag.jp/diy-discussion02/

 

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