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HandiHouse project と考える「日本の家、どうすればもっと面白くなる?」(後編)

HandiHouse project と考える「日本の家、どうすればもっと面白くなる?」(後編)

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「妄想から打ち上げまで」を合言葉に、デザインから工事のすべてを自分たちの“手”で行なう若手建築家集団・HandiHouse project(ハンディ)へのインタビュー。彼らが考える、理想的な家づくりについて話を伺っています。
 

日本の住まい、どうすればもっと面白くなる?

― 新築、カスタマイズできる賃貸、中古物件のリノベーションなど、住まいの選択肢は少しずつ増えてきていると思うのですが、ハンディの皆さん自身は、どうすれば日本の住まい事情がもっと面白くなると考えていますか?

加藤:僕の場合は、その選択肢自体が増えるといいなと思っています。今って、住宅展示場に足を運んでハウスメーカーで買って…という流れがどうしても強いじゃないですか。大事なのは、お施主さんが「自分にどういう住まいがあっているのか」「どういう暮らし方があっているのか」「どういう家の持ち方があっているのか」というのを、ちゃんと考えられることだと思うんですよね。それが考えられない今の状況、選択できない状況というのはちょっとどうかなと思っています。

中田:僕はもう少し「手仕事」の世界に近づけたい。いまは全てが製品になって、その組み合わせで家ができています。そうではなくて、昔はそうだったと思うのですが、全てを誰かに任せきりにしないで、自分の住まいを自分たちでアレンジしていけるような世界に戻したいという気持ちはあります。

― そう言われると、モノと違って、家に対して「自分の持ちもの」という感覚はあまりないかもしれません。決まりきった空間に住むというのが当たり前になりすぎていて、そもそも自分でこだわって作った空間に住むことの良さが分かっていないのかも。

加藤:ハンディの活動をやっていていいなと思うのが、お客さんと一緒に手を動かしながら「家ってこうできています」「仕上げの下地はこうなっています」という“家の作り方”を共有することで、お客さんの発想がすごく自由になるんです。例えば欲しいものがあったときに、「自分で作るとしたらどうすればいいのか」という考え方ができたり、逆に作り方が分かることで「こういうものを作りたい」と発想できるということもあると思う。

実際、住みはじめてから「丸ノコ買って、インパクト買って、自分でテーブル作りました」みたいなお客さんもいるんですよ。ハンディの活動は、ただ一緒に家づくりを楽しむというものではなく、お客さんの住まいへの意識のレベルをあげることのできる“手段”という意識でやっています。

ハンディが手がけた新築戸建て

リノベーションだけでなく、最近は新築の戸建てを手がけることも。

 

― とはいえ、誰もがいきなり“家づくりをする”というわけにはいきませんよね。そういう場合はまず何からはじめてみるのがいいのでしょう?

坂田:やっぱりきっかけとしては、ワークショップに参加してみるとか……。

中田:「リノベパーティ」に参加するのもいいかも。友だちのお店づくりを1日だけ手伝った子がいて、それだけでものすごく感化されて。すぐに工具を買って、めちゃくちゃカッコいいテーブル作った…という子がいましたね。

※リノベーパーティとは…
“できる工事は「自分たち」で行い、多少の失敗はご愛嬌で、「作るプロセス」を重視し友達・家族(パーティ)と「パーティ感覚」で楽しむというスタイルである。パーティ(仲間)の募集は「フェイスブック」を使用し、「作るプロセス」 も「フェイスブック」で共有・拡散する。”
― リクルートホールディングス プレスリリースより引用
http://www.recruit.jp/news_data/release/2014/1217_15511.html#001

加藤:でも、「壁を塗る」とか「床を張る」とか、そのプロセス自体にスポットがあたることには違和感があるんだよね。そうじゃなくて、その先にある「自分はどういう暮らしがしたい」とか「どういう部屋に住みたい」とか、そのイメージをまず描くことが大切なんじゃないかと。

最近のDIYブームもそうですけど、プロセス自体にスポットがあたっちゃうと、特定のプロセスさえ体験できれば何でもよくなってしまう。作業しているときは楽しいかもしれないけど、実際に仕上がりを見てみたら「何だこれ」みたいな。全然テンション上がらないぞ、っていうことにもなりかねない。

 

DIY体験では得られない、“自分のものを作る”という経験。

坂田:たしかに、「作業が楽しい」で終わっちゃうのはよくないと思うんだけど、まず現段階で自分の理想の暮らしや住まいをイメージできない人が多いという問題もあるわけで。とりあえず何か少しでもいいから一つやってみれば、きっかけが掴めるかもしれないと思ってリノベパーティに参加しようという人もいるんじゃない?

加藤:そうだね。リノベパーティそのものへの違和感というよりは、スタンスの問題なのかもしれない。「安く済ませるためにやる」とか「素人がやるんだからちょっとくらい汚くてもいい」みたいな、そういうスタンスは違うんじゃないかと思ってる。

やっぱり、基本的に建築の作業ってすごく大変じゃないですか。その大変さを乗り越えられるのって、「こういうものが欲しい」という最終的なゴールをイメージできているからこそだと思うんです。そこがごっそり抜け落ちたDIYにはあんまり意味がない。自分でペンキを塗る、という行為自体が大事なわけじゃないと思う。

― それで自分が求めていたものができるかどうかは、また別の問題ですからね。

中田:とはいえ、作りたい欲求を満たすことで止まってしまう人もいるけど、そうじゃない人もいるはずだよね。

坂田:なので、もし何かきっかけが欲しいという方に僕が一言だけ伝えるとすれば、「かとちゃんがいるワークショップには参加するな」と。

加藤:ワークショップはやらない(笑)!

でも本当に、住まい手のイメージを引き出したりリテラシーを上げていくというところにこそ、プロの力が必要だと思う。一般の方だとなかなか理想の暮らしや住まいをイメージするのは難しい。そこに対して「こういう世界があるんだよ」というのをいかに見せていくかが、プロに求められていることであって。

DIYが普及するとプロの仕事がなくなると言われることもあるんですけど、そんなことはないと思う。むしろDIYが浸透することで、プロに頼むべきこと、プロにしかできないことが整理されて、一般の方がプロの職人に依頼するという流れがより強くなる可能性もあるんじゃないかと。

― そういう意味では、逆にプロ側からの積極的な働きかけが、一般の住まい手の意識を刺激する良いきっかけになるのかもしれないですね。

坂田:例えば、学校で“ものづくり”の授業をする、というのは素敵だと思う。個人的には、スポーツの部活と同じレベルのモチベーションでものづくりをする部活みたいなのをやりたい。ゆくゆくは、“ロボット甲子園”的な全国大会みたいなものも。何かそういうノリでやれると、ものづくりに対するイメージが変わってくるんじゃないかと。

中田:ワークショップやリノベパーティで違うなと感じるのは、作っているのが「自分の家でもないし、自分のものでもない」というところだと思うんですよね。

逆に言えば、それが自分の使う器だったり着る服だったり、自分の家に置くテーブルだったりすると、やっぱりすごく一生懸命に考えるし、発想するじゃないですか。重要なのはそこなのかもしれない。

― なるほど、「自分のものを作る」という体験が大事だと。

中田:だから、「DIYサポート」という形式は良いと思う。DIYサポーターとして活動するプロの職人がたくさん出てくると、面白くなるでしょうね。

※DIYサポートとは…
R不動産toolboxが展開する、DIYのお手伝いサービス。詳細はこちら

加藤:プロが発信すべきなのは、技術というよりも、「こういうものが実は自分たちで作れるんですよ」という情報なのかもしれない。技術なんて、DIYだけで磨こうとしたらそれこそ何十年もかかっちゃうから。

子どもたちと家づくり

子どもたちと一緒に作業することも。

“住まい手”と“作り手”の距離は、もっと近くなっていくべき。

坂田:DIYサポートといえば、何だかんだ一番すごいのは、シルバー人材センターのおじさんたちなんじゃないか、とも思っているんですよね。もともと大工をやっていた方とかが登録されたりしているから。DIYサポートは、そこでやるべきなのかも。

中田:その人の特徴とスキルで選べる、人材のレンタルサービスみたいな形は?個人が職人さんに直接依頼できるような。

坂田:それは絶対いい。理想ですよね。それをやるには職人側も頑張らないといけないし、頼む側も頑張らないといけない、ということになるんですけど。

加藤:うん、職人側がもうちょっと変わらなきゃいけないんだろうなというのはありますよね。要はただ仕事をやるのではなくて、ちゃんとコミュニケーションを取りながらやっていかないと、たぶん今後は仕事もなくなっていくんだと思うし、逆にそこでプラスアルファの仕事を取れるようにもなる。そうすると、一般の方が職人という仕事をリスペクトするような状況にもなるんじゃないかと。

中田:ただ今の仕組みでは、職人さんが柔軟に動くのが難しいですよね。すでにいろいろな現場に入っているので、1日だけ抜けてDIYサポートに行くということがなかなかできない。だからプロの職人さんではないけど、DIYに慣れてきた一般の人がサポートしてくれるようになると一番いいのかもしれないよね。

坂田:それか、駆け出しの職人。ハンディもDIYサポートに参加していたんですが、それもちょうどハンディを始めて1〜2年くらい。そういう駆け出しの職人にとってのサービスだといいと思うけどね。

加藤:結構、勉強になるんですよ。要は初対面の人を1日だけお手伝いするわけだから、どうコミュニケーションをとればいいのか、実際すごい勉強になりました。

坂田:学生もいいかもしれない。専門学校の学生のアルバイトというか、何なら授業の一環としてDIYサポートをやる。お客さんのところに行ってコミュニケーションも学びながら。

加藤:それで「そのぶん安くできますよ」みたいになると嫌だな。

坂田:実際には安くはなるんだろうけど、売り文句としては「みんなで素敵な職人を育てましょう」ということにしたい。消費者側が「職人を育てる」という意識を持つこともすごく重要だと思うんですよ。

たしかに僕らにとって、一般の住まい手の意識を高めていくことも重要なんですが、一方で、感度の高い消費者の方に「こういうやつに頼みたい」と思ってもらえるような職人を育ててもらうことも重要だと思うんです。

ちょっと極端なたとえですが、施主さんが払う3万円に対して、直接工事をうけている工務店は3万円もらえるわけですけど、工務店の下に入っている職人はそこから2万円しかもらわないから、2万円分の仕事をしようとするわけですよ。だったら、「こいつを育てたい」と思える職人に直接3万円を渡したほうが、同じ金額でもクオリティは上がるんです。

大ざっぱで夢見がちな意見だとは思うけど、でもこれをきちんとやっていけるようになったらすごく良いと思う。

加藤:これって、ハンディが大事にしていることでもあるんですよよね。ハンディの場合は基本的に最初から最後まで一人の人間がその物件を担当するので、お客さんとしても安心できるし、意見も言いやすいし、現場も見に行きやすい。さらにいうと、クレームにもなりにくいんですよね。要は「この人が作っている」という顔が見える関係が重要だということ。どういう人が作ってくれているのか分かっていれば、お客さんもその人のことを考えてくれるようになる。

― 従来のやり方だと、頼んでいる人と作っている人が、直接顔を合わせないまま家ができてしまうことも珍しくないわけですよね。

中田:その離れすぎた距離が、やはり問題だと思います。

加藤:職人としても、やっぱり誰のために作っているのか分からないのは辛い。そこに気づいてほしいなという気持ちはありますね。

― 自分の家を作ってくれるのは、どんな職人さんなのか。自分が作っている家のオーナーは、どんな人なのか。新築であれ中古住宅のリノベーションであれ、施主と職人とがお互いに顔の分かる距離感で家づくりを進めることが、より面白い家をつくるための第一歩なのかもしれませんね。

今度はぜひ、メンバー5人そろってのインタビューもお願いします。今日はありがとうございました。

 

 

(終わり)

 

HandiHouse project の詳細はこちらから

オフィシャルWEBサイト

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