中古住宅の耐震性ってどこまで信頼できる? さくら事務所 長嶋修さんに聞く(2)

    中古住宅の耐震性ってどこまで信頼できる? さくら事務所 長嶋修さんに聞く(2)

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    早くて2015年、遅くとも数年の間に「中古住宅」の評価基準が変わり、築年数ではなく品質によって住宅の価値が査定されるようになる――。前回そう語ってくれた、「さくら事務所」会長で不動産コンサルタントの長嶋修さん。「中古住宅の資産性が高まり、住宅購入の際に中古を選びやすくなる」とのことでしたが、とはいえ安全性の部分で不安があるのも事実。例えば、中古住宅の耐震性についてはどのように考えればいいのでしょうか?

    ▼前回の記事はこちら
    良い物件を安く買えるのは今だけ!? さくら事務所 長嶋修さんに聞く、住宅市場“激変”の兆し。

    中古住宅の耐震性は、どこまで信頼できるのか?

    ― 中古住宅をマイホ―ムにと考えると、まず出てくるのが耐震面の不安だと思うんです。

    なるほど。耐震の基準について簡単に整理しておくと、現行の耐震基準は、1978年の宮城県沖地震をきっかけとした1981年の法改正によって定められた基準です(※建築基準法改正)。

    1981年以前のものを旧耐震、後のものを新耐震と言っていますが、ただこれは主にRC鉄筋コンクリートの基準なんですね。木造住宅に関しては、ほとんど変更がなかったんです。ところが阪神大震災を経て、やっぱり木造についてもちゃんと見直そうということで、2000年の6月に法改正されました。つまり、RC鉄筋コンクリート造は1981年6月の前か後か、木造住宅の場合は2000年6月の前か後かで見極めるべし……というのが教科書的なお話です。

    ― 実際はそうではないと?

    もちろん傾向としてはそうなんですが、私たちが実際に検査・診断してきた物件を振り返ってみても、1981年以前に建ったマンションが現行の基準よりよっぽど高いレベルで耐震性を満たしている場合もあるんです。2000年以前の木造戸建てで、全く問題ないものももちろんあります。

    逆に、1981年以降の鉄筋コンクリートのマンション、あるいは2000年以降の戸建て住宅でも、基準を満たしていないものがないとは言えないんですね。法改正が周知徹底されるのにはなかなか時間がかかるので、意外と昔の基準で作ってしまっていたりとか。

    ― え、そういうことがあるんですか!?

    ありますね。そういうこともあって、耐震性に関しては建物ごとの個別性が極めて高く、一戸一戸それぞれ調べないと正確なことは分からないんです。

    ただ前提として理解しておくべきなのは、今の日本の耐震基準は世界でもトップレベルで高いんですよ。旧耐震の基準でも、相当に高度なレベルです。ちなみに新興国、例えばタイやマレーシア、フィリピンなどの耐震基準は、今でも日本の旧耐震と同等のレベルですね。

    そういう事実もあるので、私自身は皆さんが仰るほど耐震性が問題だとは思えないんですね。過剰にナーバスになる必要はないのにな、と。

    ― なるほど…。「新耐震にしておけば安心」という理由から、割高であっても築浅の中古物件を購入しようとされる方も多いですよね。

    もちろん新耐震にしておくにこしたことはないんですが、そうすると1981年より前のマンションは選べないということになっちゃう。そうすると、かなり選択肢が狭まっちゃいますよね。

    ― そうなんです。とはいえ、あまりに古いと「あとどれくらい住めるんだろう」という不安も出てきますよね…。

    そもそも、マンションは何年“もつ”のか?

    ― そもそもマンションって、どれくらいもつものなんですか?

    これもやっぱり、世の中一般でイメージされているよりも全然もちますよ。よく「マンションの寿命は37年」とアナウンスされていますよね。でも、その根拠は「建て替えされたマンションの平均築年数」なんですよ。寿命じゃないんです。まだ住めるのに建て替えているものもありますから。マンションの寿命って実際はもっと長いんですね。

    同様に木造住宅についても27年ないしは30年と言われていますが、こちらも元になっている国交省のデータを紐解くと、根拠は取り壊した住宅の平均築年数。物理的には、まだまだ十分にもつんですね。

    ― 寿命じゃなく、実は平均築年数。誤解が生じているわけですね。

    そうなんです。この状況はおかしいということで、建築寿命を専門的に研究しておられる早稲田大学の小松幸夫教授が、人間の平均寿命を出すのと同じ計算手法で、建物の平均寿命を出したんですね。結果、どうだったと思います?

    木造住宅の平均寿命が64年、RC鉄筋コンクリートが68年ですって。しかも、これはあくまで平均値だから、もっと長くもつものもあるわけで。普通に設計され普通に工事されて、所有者がほどほどに点検・管理していれば、100年近くはもつだろうと思いますね。

    ― 100年!?

    イメージされているより、全然もちます。もちろん人間の寿命と同じく極めて個別性が高いのでケースバイケースではありますよ。一戸一戸、きちんと見るのが大切です。人間と一緒ですよ。不摂生していると、40代くらいになってあちこちガタがくるじゃないですか。

    ― それはやはり、プロじゃないと見極めきれないものなんでしょうか?さくら事務所は、まさに専門家による住宅診断サービスを行なっていますよね。

    そうですね。知識があり自分でよく建物をチェックしていて、修繕した経験もあるというセミプロのような方も稀にいらっしゃいますが、大半の方はそうではないと思います。ちょっと宣伝めいた言い回しになってしまいますが、漠然とした不安を解消するためにも、専門的な知識・技術をもつ第三者によるホームインスペクション(※住宅診断)を行なったほうが良いと思います。

    ― そう、中古住宅に対しては、“漠然と”不安があるんですよね…。

    よく分からないからこそ生じる不安ですよね。
    中古住宅に対する抵抗感って、その漠然とした不安によるものと、他人の使い古しは嫌だという生理的な抵抗と、大きく2つの要因があると思うんです。後者の生理的な問題を解消する手段としては、リフォームやリノベーションが浸透してきました。前者のほうの漠然とした不安を解消するには、もはや“調べる”しかないですよね。

    現に、イギリスやアメリカ、カナダ、オーストラリアもそうですが、一般的な先進国で中古住宅を売り買いする際は、ほとんどのケ―スで第三者によるインスペクション(※建物の検査)が入っています。私が15年前にさくら事務所をはじめたのも、日本でも先進国並みの仕組みがあったほうがいいと考えたのが一つのきっかけです。

    ― なるほど。「ホームインスペクション」についても、具体的に教えていただきたいですね。

     

    (次回に続きます)

     

    ▼インタビュー第3回はこちら
    押さえておきたいホームインスペクションの基礎知識 ―さくら事務所 長嶋修さんに聞く(3)

     

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