DIYやリノベーションが今ほど話題になっていなかった3年前に、改装可能なアパートを借り、DIYでお部屋をリノベーションしてしまった女性がいるんです。都内で出版関係の会社にお勤めの、木村かさねさん。初めての一人暮らしに際してお部屋探しをするものの、なかなか理想の物件は見つからず。だったら「自分で作ってしまおう」と、セルフリノベーションに挑戦。
特に日曜大工の経験があったわけでもなく、ご本人いわく「普通のOL」だという木村さん。そんな彼女がなぜDIYでのリノベーションに踏み切れたのか?どんなふうに理想のお部屋を作っていったのか? インタビューしてみました。
「納得できるおうちに住みたい!」から始まった、DIYリノベーション。
― まず、DIYを始めようと思ったきっかけを教えてください。
一人暮らしをしようといろいろ物件を探していたのですが、賃貸のお部屋はどれも白い壁の似たような空間ばかりで、ちょっと居心地が悪そうだなあと思ってしまって。
調べていくうちに、リノベーションやデザイナーズといった素敵なお部屋があるらしいということが分かりました。でも、家賃がすごく高かったり、手が届く範囲だと会社から遠かったりで、諦めかけていたんです。
そんな時、たまたまDIYできるお部屋を紹介している物件情報サイト「DIYP」の存在を知って、そういう選択肢もあるのかと驚きました。
― DIYPはWEBで検索して見つけたんですか?
いえ、それが本当に偶然で。物件内覧に出かけたとき、たまたま入ったカフェで読んだ雑誌にDIYPの広告が載っていたんです。
― それで改装可能な物件を探す方向にシフトしたわけですね。でも改装前の古い物件って、決してキレイとは言えないですよね…。抵抗はなかったんですか?
ありました。いま住んでいるこの部屋も、内覧した際はスケルトン(建物の構造そのもの)の状態で。初めて見たときはさすがに引きました。「ブロックむき出し…」って(笑)
出典:www.diyp.jp
でも、3日ぐらいじっくり考えて、やっぱりここにしようと。ブロックも打ちっぱなしの壁だと思えば!
― なるほど(笑)。そもそも改装OKの物件自体、決して多くはないですよね。やっぱり物件を探すのは大変でしたか?
そうですね。それに物件の状態によっては、素人が簡単には手をつけられないものもあります。ここはスケルトンの状態で借りることができ、しかも水回りが既に新しいものに取り替えられていたので良かったのですが、例えば古い壁紙がそのまま残っていたり、水まわりが古いままだったりしていたら、諦めていたかもしれません。
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出典:www.diyp.jp
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出典:www.diyp.jp
このお部屋みたいなスケルトンの賃貸物件がもっと多くなれば、DIYにチャレンジする人が増えるかもしれないですね。
友だち、不動産屋さん、職人さん…たくさんの人の協力で作り上げたお部屋。
― 実際のお家づくりの作業は、まず何から始めたんですか?
まずは壁と天井の塗装ですね。壁は「珪藻土」で、天井はペンキで塗りました。天井は脚立をレンタルして、ローラー刷毛でコロコロと。

ナチュラルで美しい雰囲気の玄関の飾り
― 完成のイメージやインスピレーションは、何から得たんでしょう?
お部屋探しをしているときから、インターネットや本、雑誌で、素敵なお部屋をチェックするようにしていました。全部をマネするのではなく、いろんなお部屋の“おいしいところ”を活かそうと思って、かなりの数を見ていましたね。
そうする中で「珪藻土」という素材の存在を知って、「じゃあ壁に塗ってみよう」とか。壁の一面だけ色をつけて、アクセントにしようとか。

珪藻土を塗った壁。ヒトデの飾りにも女性らしさが光る。
あとはDIYをしながら、いろんな方にアイディアをもらえたことも大きかったですね。例えば、フローリング貼りを「HandiHouse Project」の方々に手伝ってもらったんですが、その際に、塗るだけで壁を黒板として使えるようになる「黒板塗料」というものがあるよと教えてもらって。実際に天井の一部は黒板塗装で仕上げました。

天井の一部を黒板塗料でペインティング。
― なるほど。専門家の方のサポートもあったんですね。
そうですね。「R不動産toolbox」というDIY向けの素材やパーツが揃ったWEBサイトがあるんですが、そこに問い合わせ、実際にフローリング板を見に行ったんです。するとスタッフの方々が、「やり方がわからないけど、とりあえず買います」という私を心配してくれて(笑)
toolboxで申し込めるDIYのサポートサービスを紹介していただき、そこで出会ったのがHandiHouse Projectさんでした。
― 壁の珪藻土やペンキ塗りは一人で?
3年前のゴールデンウィーク、友人たちに手伝ってもらって5日間ぐらいかけてやりました。一緒にやってくれそうなメンバーが頭に浮かんだので、巻き込んで文化祭みたいに遊びでやっちゃった感じですね。
友人もみんな素人だったので、私が檄を飛ばしながら(笑)。現場監督みたいな感じで楽しかったですよ!
そこで8割くらいはできましたが、気に入った材料が見つからなかった部分だけそのままにしておいて、そこから数ヶ月かけて徐々に仕上げました。
― 残したおいたこだわりの部分とは?
床に貼る“タイル”です。タイルには特にこだわりたくて、半年くらい探していましたね。そんな中で、学生の頃からお世話になっている美容師さんに「アドヴァン」で見てみるといいよと教えてもらって。実際に店舗に足を運んで、“これだ”というものに出会いました。
― アドヴァンというと、いわゆる“建材屋さん”ですよね。
そうです。当時は女性のDIYというのも今ほどメジャーではなく、私みたいなお客さんはかなり珍しかったみたいで。スタッフの方も不思議そうに「施工屋さんは決まってますか?」と(笑)
私も私でその質問の意味すら分からず、「自分でやるんです」と答えたら、ぽかんとした顔をされてしまいました。今となっては良い思い出ですね(笑)
― お部屋の中で一番気に入っているところはどこですか?
黒板塗装した天井かな。遊びに来てくれた人や取材に来てくださった方に、自由にいろいろ描いてもらっています。
同じマンションのお隣さんも遊びに来てくれました。もう描くスペースがなくなってきたので、そろそろ黒板を広げなきゃと思っています。

友人たちが自由に書いた黒板の天井。
(後編につづく)
※次回は、木村さんが参考にした書籍や失敗談のほか、これからチャレンジしてみたい方へのアドバイスもお届けします。後編もお楽しみに!