全国各地に今なお残る、日本建築界の偉才「村野藤吾」の作品たち。

    全国各地に今なお残る、日本建築界の偉才「村野藤吾」の作品たち。

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    20世紀、戦前から戦後にかけて活躍した建築家、村野藤吾を知っていますか?

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    出典:www.konan-wu.ac.jp/gallery

    彼が生涯をかけて設計した作品は、幅広く多様。例えば、日比谷の日生劇場、大阪新歌舞伎座、有楽町の読売会館、三重県の志摩観光ホテルなど、同じスタイルは繰り返さないため、一見しただけでは村野作品だと分かりづらいとも言われています。「99%関係者の話を聞き、残りの1%から出発する。それでも村野は残る」という彼の言葉が残されているのだとか。

    村野の想いが細部に宿る、心に残る建物。

    村野藤吾は93歳で亡くなる前日まで仕事をしていたと言われています。作品への情熱を持ち続け、数多くの作品を残しました。最初の作品は、大阪の渡辺節建築事務所から1929年に独立し設計した「森五商店ビル(現・近三ビルヂング、東京都中央区)」。きりっとした直線が印象的な作品で、窓まわりの意匠に徹底してこだわり、建築の本質をシンプルに表現しています。当時来日していたブルーノ・タウトからも高い評価を得たのだとか。

    近三ビルをはじめとする彼の作品は、今でも日本全国で見ることができます。ただ完成から50年以上経つものも増え、残念ながら取り壊しが決まっていたり、持ち主が変わって外観だけが残されていたりと、その数は減りつつあります。今回はまだ外観を見ることができたり、内部を見学することができる村野藤吾作品をご紹介したいと思います。

    今もなお斬新で新鮮な村野作品を堪能しましょう。

    【関東】

    迎賓館(旧赤坂離宮改修)

    東京都港区元赤坂2-1-1

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    photo by Dick Thomas Johnson

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    photo by Kentaro Ohno

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    出典:www8.cao.go.jp/geihinkan

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    出典:www8.cao.go.jp/geihinkan

    外国の元首や首相といった国賓の宿泊など接遇を行なう「迎賓館」の改修も村野の仕事。1909年に完成した明治を代表する洋風建築の原型を尊重しながら、全体のイメージを更新。改修という条件下で村野の演出的手腕が発揮された作品です。築後100年を迎えた2009年に近代建築物として初めて国宝に指定されました。普段は門扉から中に入ることはできませんが、迎賓館参観や迎賓館赤坂離宮の前庭公開なども行なわれています。詳細はウェブサイトをご覧ください。

    公式サイト:www8.cao.go.jp/geihinkan

     

    箱根プリンスホテル(現:ザ・プリンス箱根芦ノ湖)

    神奈川県足柄下郡箱根町元箱根144

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    出典:www.facebook.com/theprincehakone

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    出典:www.facebook.com/theprincehakone

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    出典:www.princehotels.co.jp/the_prince_hakone

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    出典:www.idee-online.com

    国立公園内、芦ノ湖東岸に建つリゾートホテル。1978年竣工、2007年に一部改修。木を伐採することなく地形を活かした円形の建物は2棟あり、まるで花弁のようにはりめぐらせたバルコニーが美しく柔らかな印象です。

    このホテルの設計に合わせてデザインされたのが今もロビーに置かれている「スワンチェア」。低い座面が独特な外見ですが、足をのばして座ってもソファのように腰掛けても座りやすい美しい椅子です。「家具をちゃんとデザインすることができれば、大きな建築の設計も十分こなすことができる」と村野が言う通り、この椅子に座った人が美しく見えるようにデザインされています。スワンチェアの復刻も発売されています。261,360円(税込)〜。

    公式サイト:www.princehotels.co.jp/the_prince_hakone

     

    新高輪プリンスホテル(現:グランドプリンスホテル新高輪)

    東京都港区高輪 3-13-1

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    photo by Toshihiro Oimatsu

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    photo by Masaru Kamikura

    1982年に竣工した村野の晩年の傑作のひとつ。高層の宿泊棟と低層のロビー棟、レストラン棟などから構成されています。2−6階(7−16階は改装時に仕様を変更)の客室入口にはアルコーヴがあり、門扉と門灯がついています。外壁は白の特製タイル仕上げで、半円形のバルコニーが美しいファサードを形づくっています。それまでに試みられていたさまざまな手法が結集された作品。現在は内装にも変更が見られ、残念ながら竣工当時の様子を見ることはできません。

    公式サイト:www.princehotels.co.jp/newtakanawa

     

    横浜市庁舎

    神奈川県横浜市中区港町1-1

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    出典:www.city.yokohama.lg.jp

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    photo by Ishikawa Ken

    池のある中庭をコの字型で囲む建物の横浜市庁舎。1959年に竣工されたもので、当時村野が好んだコンクリートの打ちっ放しを暗褐色のタイルで埋めています。内部の市民ホールには、辻普堂による美しい壁面レリーフが。市庁舎は、2020年を目標に移転計画が進行しています。

    公式サイト:www.city.yokohama.lg.jp

     

    日本ルーテル神学大学(現:ルーテル学院大学)

    東京都三鷹市大沢3-10-20

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    出典:www.luther.ac.jp

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    出典:www.luther.ac.jp

    1969年に建てられたコンクリート打ちっ放しの壁が印象的な作品。まるで西欧中世の宗教施設を思わせるような佇まいですが、窓の大きさや形状を変えることで豊かな表情が表現されています。

    公式サイト:www.luther.ac.jp

     

    千代田生命本社ビル(現:目黒区総合庁舎)

    東京都目黒区上目黒2-19-15

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    出典:www.city.meguro.tokyo.jp/shisetsu/shisetsu/chosha

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    出典:www.city.meguro.tokyo.jp/shisetsu/shisetsu/chosha

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    出典:www.city.meguro.tokyo.jp/shisetsu/shisetsu/chosha

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    出典:www.city.meguro.tokyo.jp/shisetsu/shisetsu/chosha

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    出典:www.idee-online.com

    「典型的な近代オフィスビル、いわゆる鉄とガラスの表現だけでなく、千代田生命の長い伝統と表現によるたたずまいを、おぼろげに頭の中で往来させていた」と村野が振り返った作品。1966年竣工。建物全面を覆う、彫りの深いアルミ鋳物のたて格子が印象的です。2003年に目黒区総合庁舎として生まれ変わり、今も区民から愛されています。

    さらに村野が役員室のためにデザインしたソファは、復刻を果たしています。木枠に施された繊細なカーブや脚先のステンレス使いなど美しいディテールは職人技があってこそ。1人掛け347,760円〜、3人掛け596,160円〜(ともに税込)。

    ?公式サイト:www.city.meguro.tokyo.jp/shisetsu/shisetsu/chosha

     

    【北陸】

    谷村美術館(澤田政廣作品展示館)

    新潟県糸魚川市京ケ峰2-1-13

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    出典:www.gyokusuien.jp

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    出典:www.gyokusuien.jp

    彫刻家、澤田政廣の木彫仏像を展示するために1983年に作られた美術館。外観はシルクロードの砂漠地帯の家と環境を原風景にしています。内部には、湾曲した半円形の部屋、洞くつのような部屋があり、仏像の展示はその中に。作品を引き立たせるため、やわらかくほのかな自然の光と照明で仏像が浮き上がるよう演出されています。季節や天気、時間によって違った表情が楽しめるように作られているのも魅力です。

    公式サイト:www.gyokusuien.jp

     

    加能合同銀行本店(現:北國銀行武蔵ヶ辻支店)

    石川県金沢市青草町88

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    出典:hokkokubank-musashigatsuji.amsstudio.jp

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    photo by cittadioro

    レンガタイルの壁面に、2階に届く高さの尖頭アーチの開口が3つ並んだファサードが目を引く作品。村野が独立後、1930年に欧州を訪れ、帰国後すぐに取り組んだ作品のため、その影響が強く表れています。金沢市の反対により取り壊しの危機から逃れ、曳家工法によって現在の場所に移転されました。3階は金沢の文化芸術を育むNPO法人「金沢アートグミ」として使われています。

    公式サイト:www.hokkokubank.co.jp

     

    【中部】

    志摩観光ホテル(現:志摩観光ホテル クラシック)

    三重県志摩市阿児町神明731

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    出典: www.facebook.com/shimakankohotel

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    出典:www.miyakohotels.ne.jp/shima-classic

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    出典:www.miyakohotels.ne.jp/shima-classic

    三重県志摩市の英虞湾内にある賢島に立つホテル。2016年にこの賢島で「伊勢志摩サミット」が開催されることになり、注目が集まっています。英虞の美しい景色や既存の周辺環境に溶け込むように作られ、内部は新旧が巧みに組み合わせているのが特徴。素朴ながら上質で落ち着くもてなしの空間です。

    公式サイト: www.miyakohotels.ne.jp/shima-classic

     

    【関西】

    都ホテル京都(現・ウェスティン都ホテル京都)

    京都市東山区粟田口華頂町1

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    photo by Chris J

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    出典:www.idee-online.com

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    出典:www.idee-online.com

    山が迫る傾斜地に建てられた、京都屈指の格式高いホテル。村野が都ホテルの建築として初めて設計したホテルとしても知られています。新本館は残念ながら、2002年の改装により竣工当時の内装はほぼ見ることができなくなっています。ホテル内、佳水園庭園にある和風別館「佳水園」も村野によるもの。戦後の数寄屋造り建築の傑作としても知られています。

    このホテルのために村野がデザインを手掛けたラウンジチェアとローテーブルも復刻し販売されています。村野がデザインする家具は特定の空間のためにデザインをしていながら、普遍的な美しさが特徴。1人掛け298,080円〜、2人掛け447,120円〜、テーブル95,040円(すべて税込)。

    公式サイト:www.miyakohotels.ne.jp/westinkyoto

     

    日本基督教団 南大阪教会

    大阪府大阪市阿倍野区阪南町1-30-5

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    photo by m-louis .®

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    photo by m-louis .®

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    photo by m-louis .®

    村野が渡辺節建築事務所から独立する前に匿名で設計した教会。塔部分は、現存する最初期の作品としてとても貴重です。老朽化と収容力の問題から1981年に再び村野の設計によって改築が行われました。塔は竣工当時のまま残され、礼拝堂のみ建て替えられました。曲面の壁を組み合わせ、自然光を取り込む工夫が凝らされた美しいつくりです。

    公式サイト:www.geocities.jp/mochurch2011

     

    橿原神宮駅舎(現:橿原神宮前駅舎)

    奈良県橿原市久米町618

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    photo by m-louis .®

    村野が手がけた数少ない駅舎のひとつ。1940年に建築されたもので、外観は大和棟と呼ばれる奈良地方特有の屋根形状を持つ民家のスタイルを用いています。私鉄にはめずらしく皇室用の貴賓室があり、壁面には古代の銅鐸や埴輪をモチーフとした装飾がはまっているそう。

    公式サイト:www.kintetsu.co.jp/station/station_info/station07032.html

     

    梅田換気塔

    大阪府大阪市北区曽根崎2−16

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    photo by hiromitsu morimoto

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    photo by hiromitsu morimoto

    大阪キタの一等地にそびえ立つ、高さ14−18mの5本の吸気塔。ステンレスの硬質な輝きと柔らかな曲線が不思議な雰囲気を醸し出しています。1963年に作られて以来、古びれることのない斬新さに驚かされます。今も地下街「ホワイティうめだ」の吸気塔として現役で活躍しています。

     

    甲南女子大学

    兵庫県神戸市東灘区森北町6-2-23

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    出典:www.konan-wu.ac.jp/gallery

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    出典:www.konan-wu.ac.jp/gallery

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    出典:www.konan-wu.ac.jp/gallery

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    出典:www.konan-wu.ac.jp/gallery

    山裾の傾斜を活かし折り重なるように建物が配置されたキャンパス。学生会館のみガラス張りにし、その他は経年変化を見越して、ベージュのモルタルスタッコによる白っぽい粗面仕上げで統一しています。管理棟、講堂、文学部など6棟がひとつひとつ個性的でありながら建築群として一体感を保っています。

    公式サイト:www.konan-wu.ac.jp/gallery

     

    【中国】

    世界平和記念聖堂(カトリック幟町教会)

    広島県広島市中区幟町4-42

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    photo by scarletgreen

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    photo by scarletgreen

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    出典:www.nobori-cho-catholic.com

    原爆投下により倒壊した教会を世界各国のカトリック信者からの寄付により1954年に再建した教会。会堂、高塔、記念聖堂、洗礼堂など美しいバランスで建てられ、見るものを圧巻します。外観は柱と梁をコンクリート打ちっ放しにし、その間に広島の砂を含んだセメントレンガを積んでいます。教会堂は骨組みに添ってアーチ状の側廊が並び、カトリック教会の伝統的空間形式を踏襲しています。2006年に国の重要文化財に指定される村野の代表作。

    公式サイト:www.nobori-cho-catholic.com

     

    宇部市渡辺翁記念会館

    山口県宇部市朝日町8-1

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    出典:www.city.ube.yamaguchi.jp/kyouyou/bunka/kanrenshisetsu/watanabeokinakinen

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    出典:www.city.ube.yamaguchi.jp/kyouyou/bunka/kanrenshisetsu/watanabeokinakinen

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    出典:www.city.ube.yamaguchi.jp/kyouyou/bunka/kanrenshisetsu/watanabeokinakinen

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    出典:www.city.ube.yamaguchi.jp/kyouyou/bunka/kanrenshisetsu/watanabeokinakinen

    宇部市の発展に貢献した渡辺祐策翁を記念して1937年に作られた会館。正面の広場に向けてゆるやかに湾曲した大きな壁面を見せる姿が印象的。正面に塔のようなオブジェが並び、まるでギリシャ神殿のようです。内部は重厚な大理石張りの豪華さで、マッシュルームのような柱をはじめアールデコ調の空間に仕上げられています。1994年に大規模な修繕を経ていますが竣工当時の姿を留めています。2005年に国の重要文化財に指定されています。

    公式サイト:www.city.ube.yamaguchi.jp/koukyouannai/bunkakyouiku/watanabeokinakinen

    将来のために残したい、村野藤吾の粋なスピリット。

    2020年の東京オリピックを機に、古い建物を新しく建て替える計画が多く持ち上がっています。地震の多い日本、古い建物は耐震性が低いため、仕方ないと諦めざるを得ない部分もあるのでしょう。さらに補修に多額の費用がかかるなど、維持することが難しい状況にあるものもあるはずです。ただ、一度壊してしまった建物は二度と同じものを作ることはできません。建物からは設計した建築家のスピリットを感じることができます。街づくりの一環として、古い建物の補修・維持を検討できればいいですね。

    2015年7月?9月にかけて、目黒区美術館で、村野建築の模型約80点を中心に構成された展示が行われています。模型を通して村野建築の魅力をさまざまな視線から伝える内容になっています。大人対象のワークショップも開催予定。詳細はウェブサイトをご覧ください。

    村野藤吾の建築?模型が語る豊饒な世界

    目黒区美術館
    東京都目黒区目黒2-4-36

    会 期:2015年7月11日(土)〜2015年9月13日(日)
    時 間:10:00?18:00(入館は17:30まで)
    休館日; 月曜
    観覧料:一般800円、大高生・65歳以上600円、小中生は無料
    公式サイト:mmat.jp/exhibition/archives/ex150711

     

     

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