暮らしの中に本との出会いを。「架空の本屋」が切り取る人生の1ページ。

    暮らしの中に本との出会いを。「架空の本屋」が切り取る人生の1ページ。

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    突然ですが、「暮らし」を英語でいうと何になるでしょうか?

    答えはもちろん”LIFE”ですが、この単語には「生活」「人生」の他にも、「伝記」(life story)という意味があるのです。

    誰かの暮らしを一冊の本のように開けば、そのページには鮮やかなストーリーが刻まれているはず。

    今回は、そんな「”LIFE”との出会い」を届けてくれる「架空の本屋さん」のお話です。

     

    「本と人生の写真館」KUJIRA BOOKSの実態に迫る

    その「架空の本屋」とは、KUJIRA BOOKSという「MEET A BOOK, MEET A LIFE」をコンセプトにしたウェブサイト。

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    「本屋」といっても実際に本を売っているわけではなく、「写真を通して本を知る」のテーマのもと「人と本」のポートレートを掲載しているオンライン写真館。「架空の本屋」というコンセプトもまた、このようなユニークな着想に由来しているのです。

    このプロジェクトを手がけるのはフォトグラファー、衣斐 誠(えび まこと)さん。

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    今回は下北沢の本屋B&Bで開かれた撮影会の様子を体験レポートすると同時に、このユニークなプロジェクトの仕掛け人である衣斐さんご本人にインタビュー取材を行ってきました。

     

    被写体が書店員!? 撮影会を体験してきた

    B&Bといえば、書店激戦区である下北沢〜渋谷エリアのなかでも、高い集客力を誇る人気店。イベントスペースを兼ねた書店として毎日注目度の高いトークイベントを開催しているだけでなく、店内の本棚からテーブル・椅子の実売も行っている「これからの街の本屋」です。

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    そのB&Bで開かれたKUJIRA BOOKSの撮影会では、被写体が自ら選んだ一冊を手にしている姿を写真におさめた後、衣斐さん自らインタビューを行い、その人とその本との関係についてヒアリングを行います。

    ちなみに、大学院で文学研究を専攻していた筆者が持参したのは『金子光晴詩集』。自分が生まれて初めて全集を買い揃えた詩人でしたが、その作品の魅力と自分に与えたインパクトについて思い入れたっぷりに語ってきました。

    被写体の話に熱心に耳を傾ける衣斐さん。

    被写体の話に熱心に耳を傾ける衣斐さん。

    ヒアリングをしていただいた際には「初めて会う人なのに、あんなにパーソナルな話題を語ってしまってよかったの!?」と思い返してビックリするほど饒舌になってしまった筆者でしたが、それも「聞き手」としての衣斐さんの魅力があったからこそ。

    さて、楽しく撮影会が終了したところで攻守交代。今度はこちらから衣斐さんのエピソードを聞き出していきます。

     

    衣斐 誠氏インタビュー

    ― KUJIRA BOOKSのサイトには「架空の本屋」という情報が載っていますが、実際に書籍を販売するサービスではないですよね?衣斐さんご自身の経歴のなかで、このようなユニークなサイトを構想されたきっかけはどこにあったのでしょうか?

    普段は音楽や踊りの舞台を中心に撮影しているのですが、写真館もやりたいなって思いもあって。でもただ撮るだけの写真館ではなくて、いろいろな新しい発見に出会えるような「場」としての面白さを持った写真館を作りたかったんです。

    その「場」としての要素の一つに本屋というアイデアがあったんですが、でも本屋で働いたことがないからイマイチよく分からなくて。そんな時に横浜のBUKATSUDOでやっている「これからの本屋講座」に参加したんですね。それが面白い企画で、本の業界の話をするだけでなく、実際に事業計画書などを作っていくんです。それをやっていくうちに「本屋をやるにはけっこうなお金がかかるな」ということが分かってきて。

    ならば「やれる事からはじめよう」と要素を削ぎ落として「写真館×本」という形式にたどり着きました。ただその段階では「(移動式)写真館をやりながら、割引サービスとして本を寄付してもらって、それを在庫として売っていく」という構想でした。ですが、それだといい本は集まらなそうだし、いろいろダメだなと。

    だったら、その場で「人が、自分のおすすめの本を持った写真を撮る」というのはどうだろうと考えたんです。人から紹介してもらう本って、自分にはない視点や新しい気づきがあったりして新鮮じゃないですか? 私の場合、自分でWEBサイトを作ることができたので、撮った写真をサイトに掲載していけば「そのサイトは(一種の)本屋のような存在になるんじゃないか」と。

    ― 「本屋」という空間への憧れはどのようにして生まれたのですか?

    本は小さい頃に親が読み聞かせをしてくれた影響もあってか、物心ついた時から好きでした。

    ネットなんてない時代、田舎で育ったので娯楽らしいものがなくて、外で泥だらけになりつつ、テレビでお笑いや映画を見つつ、新しいことに出会える本屋へ行くのが大好きでした。本であれば手にとって繰り返し読めますしね。そんな子供時代に本屋で感じたワクワク感が原体験としてありました。

    あとはそもそも「知らないことを知る」のが根本的に好きで、それは人生を豊かにする手段の一つでもあるなと思っていたので、それが(新しい発見に出会えるような「場」としての)KUJIRA BOOKSにもつながっている感じです。

    取材へのこだわり

    ― ヒアリングの際には、どういった角度から人と本にまつわるエピソードを抽出されているのですか?

    質問する際には「数ある本の中で、なぜ今日この本を?」ということを中心に聞かせていただています。それに対する答えのなかに、その人自身のストーリーがあり、お持ちいただいた本とその人の関係性が見えてくると思うからですね。

    B&B店内での撮影の様子。おすすめしたい本として彼女が持っているのは川島小鳥さんの写真集『明星』。

    B&B店内での撮影の様子。おすすめしたい本として彼女が持っているのは川島小鳥さんの写真集『明星』。

    ― KUJIRA BOOKSには非常に魅力的なポートレートが並んでいますが、撮影の際にはどんなポイントにこだわっていますか?

    撮影方法としてはいたってシンプルです。基本的に一人で持ち運びできる機材に絞って考えているので、コンパクトかつ要件を満たすもので撮影しています。

    ただサイトに載せる際には、本と人との関係をより明瞭に表現するために、モノクロの中で本だけ元の色が出るようにあとで加工しています。そうする事で人が本の背景になり、普通の本なんだけど人の気配、人生の気配を背後に感じられるようになっていると思います。

     

    人生の「節目」を彩る本たち

    ― 最後に「本」と「生活」というテーマについて、衣斐さんのお考えをお聞かせください。

    「心に残る一冊」との出会いは、人生の節目節目で起こっているように思います。何かにハマるきっかけになった本や、今を変えたいと望んだ時に出会った本などなど、そのタイミングごとに心に残る本は違っていて。恐らく節目の分だけ増えていき、その蓄積が、その人をつくっているのかな、とこのプロジェクトを進めるうちに考えるようになりました。

    「心に残る一冊」ってなにも一冊とは限らなくて、これからも増えていくんだろうなと。であるならば、良き本との出会いには、これからの人生をより素晴らしいものにしてくれる可能性が秘められているのではないでしょうか。

     

    ― フォトグラファーならではの深い人生洞察ですね。今日は貴重なお話ありがとうございました!


     

    編集後記 〜人生は、アーカイブだ〜

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    私たちが暮らしのなかで体験する色々なことには、どこかにきっと「本」が関係していて、ひとりひとりの人生を紐解いていけば、それは「アーカイブ(文書館)」のようになるのではないか…そんなことを考えさせてくれるインタビューでした。

    インタビュー終了後、KUJIRA BOOKSのネーミングの由来について衣斐さんに伺ってみました。

    「クジラって昔から「寄り神さま」と呼ばれていて、えびす様の化身だと信じられていたんですね。訪れた港に大漁を呼び寄せる“豊穣”の象徴だったんです。」

    ここにもまた、WEBサイトに訪れてくれた人の暮らしが豊かになるような出会いを提供したいという想いが隠されていたのでした。

    あなたの暮らしのなかにも、豊かな本との出会いがありますように!

     

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